ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ2 【完】




久しぶりに街を歩く。

手を繋いで微笑み合うカップルに、心が締めつけられるような切なさが襲った。

……沙奈とあんな風に歩きたかった。

そんな物思いに更けていると、

「敬太! 笑え!」

「は?!」

いつのまにか祐一郎がカメラを構えている。

「いいよ! 写真は……」

「早く! はーい、スマ~イル」

きっと、哀しげな俺を、彼は見かねたのだろう。

雲に隠れてかすむ月の下。

そのとき撮られたぎこちない笑顔を、元気になった沙奈に見せて笑い合いたい。

「ってか、どこで待ち合わせ?」

「僕たちの聖地!」

「聖地?」

停車駅の案内図を目で追っていくと、

……そういうことか。

秋葉原。すぐに意味がわかった。

異国の言葉が飛び交う街で、また新たな出会い。

「友達の敬太。彼がピンちゃん。僕ら同い年だよ」

「よろしく!」

俺が先に手を差し出す。

「ぅ、うん。こ、こちらこそ……」

……身体が大きいわりに、気が弱そうだ。

握手を交わしながら、ピンちゃんは誰かを捜しているかのように周囲をうかがっている。

それを見ていた祐一郎は、彼に言った。

「アイツは来ないよ」

「ぇえ!? どうして?」

とたんに、視線を伏せる。

ひどく気まずそうな表情が、いつかの自分と重なった。

「まさか……ちがうよね?」

「……いや、そのまさかだよ」

友達が死んだことを伝えるのは、それだけ重荷なのだ。

「嘘!? あ゛あ―」

希望が潰えたと、うなだれ、頭を抱えるピンちゃん。

早くも俺の出番。