「こ、これだ! もう……鏡は見たくない?」
「そういうこと!」
「なるほど……」
歓喜したように椅子から立ち上がり、窓の外に向かって拳を握りしめる祐一郎。
「ぁ! で、どうするの?!」
「うん……」
ここからは正直、勘だった。
「沙奈がこの病室に入ったとき、まっさきに鏡を割ったんだよ。それで落ち着きを取り戻した。だから……姿が映ったら、鏡を割るんだ。それできっと、磨理子さんは消滅する」
「ん?」
やはり、彼はこの語句に反応を示す。
「きっと?」
「……ごめん。あくまで俺の推論。一度も試したことはないいんだ」
ならばと、祐一郎はある提案を持ちかけてきた。
「今夜、一緒に来てくれないか? 僕だけじゃ心細いし、最後の“鬼”である彼にとって、キミの存在は心強い」
「…………」
俺は、沙奈の髪を撫でる。
……これが、俺のやるべきことだよね?
「ノアイダニシシヲウシナッタジャアクナレイガ……」
「…………」
祐一郎に言われる前から、俺の心は決まっていたようなもの。
最愛の人は救えなくても、目の前で困っている人を助けることはできる。
「わかった。 行こう!」
こうして、俺たちは病院を出た。


