ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ2 【完】




「矛盾してるじゃないか! 妹は殺されたのに、なんでキミは生きてるの!?」

俺は沙奈を見つめた。

答えがあるとしたら、これしかない。

「それは、愛……かな」

「は?」

自分でも歯の浮くようなクサいセリフだとわかっていたが、案の定ドン引きしている祐一郎。

「沙奈が俺の首に手をかけたとき、彼女は恐ろしい顔をしながらも、泣いてたんだ。あの涙は、肉体と魂が磨理子さんに憑依されていても、俺を殺したくないと懸命に抵抗していた証だと思ってる。愛する彼女になら殺されてもいいと、俺は死を受け入れた……でもね、その彼女って、沙奈のことだけじゃないんだ」

俺は、バッグから磨理子さんの日記を取り出し、差し出した。

「読んでみて」

「……ぅ、うん」

祐一郎は寡黙にページをめくる。

やがて、ノートを閉じたとき。

「わかる? 最初は、俺も磨理子さんのことをおぞましいとしか思ってなかった。でも、この日記を読んで、彼女を哀れみ、愛しいとさえ感じたんだ。もしかしたらその思いが、生かすという赦しを得たのかもしれない」

「……フッ」

彼はほくそ笑みながら、俺に日記を返した。

「愛についての享受を賜りに来たんじゃない。僕の友人が呪いのゲームに巻き込まれてる。残っているのは、彼ひとり。それでも儀式は可能?」

まったく心に響いていない様子に、恥じらいという後悔が込みあがる。

「ど、どうだろう……でも、本当に終わらせる方法を、俺は知ってる」

「え!?」

前のめりに身体を傾け、食い入るような目で俺を見る。

「鏡さ! 前を向いていながら後ろを見れる。ってことは、鏡に映ると、磨理子さんは身動きが取れなくなる」

「た、たしかに……」

「理由はそれだけじゃない。キミも日記を読んだから、わかるはずだ」

「……ッハ!」

なにかを思い出したように俺の手から取り上げ、ページを勢いよくめくる祐一郎。