「で、なにを訊きたいの?」
俺の唐突な催促に合わせるように、祐一郎も顔つきを変える。
「あのさ……やっぱり、呪いは本物?」
「本物だよ」
間髪入れずに答えると、その速さに驚いたのか、彼はどもりながら質問を続けた。
「じゃじゃあ、妹を殺したのは……」
「長谷川菜摘でまちがいない。推測じゃないよ、当事者だから言えるんだ」
俺は、人に会うと隠すクセがついていた小指を、堂々と彼に見せた。
「そして、彼女も」
沙奈の無気力な左腕を持ちあげ、その手のひらとともに言う。
「ッ……」
生々しい傷跡を見て、顔をしかめる祐一郎。
日常生活でも、よく見る表情だ。
「説明するよ……」
磨理子さんが、変わり果てた姿で発見された日、それは“鬼”畜の所業を尽くした夫・敏也から解放された日。
同じように、終わりの儀式も、“鬼”から一旦は開放される。
実はこの時、磨理子さんは鬼に憑依しているのではないか。
沙奈が俺を襲ったのは33日後。
それは、磨理子さんが生死の境を彷徨った日数と同じ。
この日数はいわば潜伏期間。
“生”の尊さを感じるために、設けられた時間だ。
33日後、覚醒した鬼の持つ役割は2つ。
1つは、残りの“子”を追って殺す。
もう1つは、呪いのゲームを伝播させる。
「ちょっと待った!」


