ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ2 【完】




「必要な物は僕が用意する。準備が整ったら連絡するよ」

病室の外まで見送ろうとしたが、

「ぁそうそう! この前の続き」

彼は俺と、再び対峙する。

「覚えてる? 顧客リストを持ってるかもしれない人物がいるって話したの」

……たしか……。

磨理子さんの夫、敏也の父親だったはず。

「しげのぶ、でしたっけ?」

「うん! これ、やっと手に入れたよ」

宇治木が見せてくれたのは、1枚の古い写真だった。

写っているのは、ふたり。

白いタンクトップに裾の長いズボン、黒い鼻緒の雪駄を履いた大人の男。

目尻に絆創膏が貼られ、太陽がまぶしそうな顔をする、坊主頭の小さい男の子。

「コイツが幼い頃の敏也だ。そして、こっちが父親の重信」

「よく似てますね……」

「あぁ。掘りさげて調べたけど、重信は敏也との面会後、幽霊のように消えてる。もしかしたら、秘密を知ったがために、息子と同じ運命を辿ったのかもな」

「…………」

感傷に浸っている場合ではない。

俺には、やることがたくさんある。

宇治木が病室を出ていくと、いつものように沙奈へ水を与えた。

「ほら、飲んで」

「モノハバツトシテテアシヲウシナイマスオニガシ……」

ほとんどが口からこぼれ、タオルで拭く。その繰り返し。

「沙奈……」

今はまだ正気に戻ることはなく、呪いの言葉を履き続けている。

だが、また笑ってくれるまで、笑顔の花を咲かせるまで、俺はずっと彼女のそばで、水を与え続ける。

確かめ合った想いが枯れないように。

そのためにも必要なことをしなければ……。


翌日。
俺は学校に退学届を提出し、沙奈の看病に専念することにした。