――コンッ、コンッ。
入院3日目の火曜日、沙奈の病室にやって来た人物。
「敬太くん……」
宇治木刑事だ。
「ぁ」
顔を見て、思い出したように声をあげると、宇治木は俺の肩を叩いてなだめる。
「いいんだよ。こんなことになってたなんて……キミも大変だったね」
「すみません。沙奈のことで頭がいっぱいで、連絡できませんでした」
「うん。言ってくれたら、僕も血眼になって沙奈ちゃんを捜したのに……」
「…………」
それからしばらくは沈黙が続いた。
お互いに、沙奈を見つめたまま。
「呪いは終わってなかったんです……。そうだ。僕、わかったんです。終わらせる方法」
「ホントに!?」
話す言葉の区切りに、宇治木は必ず相槌を打つ。その表情は真剣そのもの。
が、話し終えたあとで、複雑な表情を浮かべた。
「鏡か……僕のいる世界じゃ、誰も相手にしてくれないだろうな」
「…………」
彼が言いたいことはよくわかる。
なにを隠そう自分自身も、少し前はそちら側の人間だった。
すると宇治木は、俺の腕を強く掴む。
「敬太くん! キミが見つけた答えだ。キミの力で、呪いのゲームの参加者を救うんだよ! 警察の人間として表立った協力はできないだろうけど、ひとりの人間として最大限のフォローはするから!」
「た、たとえば?」
今の世の中、日本のみならず全世界へ、簡単に自分の存在を知らせることができる。
文章だけじゃなく、動画配信という形でも。
ネットから増殖した呪われし禁断のゲームを終わらせるのも、またネットによる拡散だ。
「目には目を、歯に歯を……ですか?」
「そう!」
「…………」
……それでたくさんの人を救えるなら。
「わかりました。やりましょう!」
「よしっ!」
宇治木は太ももを叩いて椅子から立ちあがった。


