10分後。

サイレンを響かせて1台の救急車と、遅れて2台の消防車が店の前を占拠した。

そう多くない野次馬に隠れて傍観していると、

「祐一郎! ……なにこれ、すごい騒ぎだね」

「あぁ」

汗だくのピンちゃんと偶然出くわす。

「ところで、杉山さんは?」

「……まだ見つかってない」

「僕の方も見つからなかった。……あの公園に戻ってみる? もしかしたら、いるかも」

「……そうだな。行こう」

僕は、今あったことを言わなかった。

「どこ行ったんだろ……」

明日の、儀式の再開を信じている彼には。

「電話も繋がらないし……」

見つかるわけがない。電話に出るはずもない。

捜している男は、もう死んでいる。

「杉山さんの行きそうな場所に心当たりがある。ピンちゃんは、家で待っててくれないか?」

「ヤだよ、オレも行く!」

オモチャ売り場で駄々をこねる子供のような彼を説得するのは大変だった。

「わかったよ。祐一郎がそこまで言うなら……じゃあ、ウチで待ってる。明日の夜こそ、杉山さんと終わりの儀式をして、呪いなんか終わらせよう!」

「ああ、もちろん!」

改札まで見送ると、ピンちゃんは去り際に手を振った。

なんともめでたいヤツだ。

僕は電車に乗ると、ホッと胸を撫でおろした。

ポケットの中でしわくちゃになっていたメモを広げ、飛鳥病院を携帯で検索する。

「そんなに遠くないな……」

病院の最寄り駅は、阿佐ヶ谷。

電車を降りて徒歩で向かっていると、初対面の人に会う緊張がいまさら襲ってきた。

……なんて。

相手はおそらく病人だ。緊張する必要はない。

それに、男だし。

『きっと力になってくれるはずだ』

ふいに宇治木の言葉を思い出し、ひしひしと期待がふくらむ。

メモに記された名前は、大橋敬太。

彼はいったい、なにを知っているのか。