「ごめんごめん!」

「べ・つ・に!」

プイッとそっぽを向く沙奈。その横顔がこれまた愛らしい。

でも、笑った顔が見たいから、弱点の脇腹をつついてご機嫌を取る。

……あれ?

まったく効かない。

「ねぇ……」

「ん?」

それどころか、猫を撫でたときのような彼女の甘い声に、理性が持っていかれそう。

「あの答え、わかった?」

「……答え?」

「小指を噛み切ったあとに言ったじゃない」

「あぁ~、あれか……」

すっかり忘れていた。

……“サホという女の子”と、俺たちのときはたしか言っていたような……。

「ダメだ。思い出せない」

それがいったい、なにを意味しているのか、いまだに皆目見当もつかない。

「私……答え、知ってるよ」

「えっ!?」

誇らしげに口もとをゆるませる沙奈。

一瞬、空が紫色に光って見えた顔は正直、不気味だった。

「じゃ~あー、敬太に10秒のシンキングタイムと、同時にヒントもあげちゃおう! いい?」

――ドゴォ――ンッ!!

遅れてくる雷鳴。

彼女は怖がるどころか、俺の身体を押し倒して馬乗りになる。

しなだれた長い髪から漂う、花のような芳しい香り。

大きく開いた胸もとにも恥じらいを見せず、俺の頬を、しなやかな指先が戯れる。

「さ、沙奈?」

……いつもとちがう。

まるで、大人のオンナ。

その魅惑の妖艶さに心は奪われた。

だが……。