地獄の底から這い出たような、体中に響く低い声。
と、次の瞬間。
――ゴロロロロッ。
雷鳴が戻り、我に返った。
「ぁ……」
肩に落ちる、これこそまさに救いの雨。
すぐさまうしろを振り返ると、木のそばに倒れている浩介。
「おい! しっかりしろ!」
抱き起こすと、ゾワリと立つ鳥肌。
「う゛あっ!!」
浩介が、カッと目を見開いたのだ。
鋭い眼光で、仰向けのまま空を睨んでいる。
「だ、大丈夫か!?」
「…………」
なにも言わず、浩介はそのままスッと立ちあがった。
第三者の僕でさえ、まだ足に力も入らないのに。
「どこ行くんだよ……ぉおい!」
「…………」
あまりのショックで、言葉が出ないのか。
だが、しっかりとした足取りで公園を離れ、駅の方向へ。
もちろん、まだ電車が走っている時間ではない。
東京育ちの割に歩くのが遅かったはずの彼が、まったく別人のように上野の街を颯爽と歩く。
「す、すみません!」
通行人と肩がぶつかっても、謝るのは後をついて歩く僕。
「なあ?」
タクシーのクラクションにも一切物怖じしない。
「なあって!」
僕の問いかけだって一切無視。
浩介は、駅についても構内には向かわず。
すぐ脇の長い坂を登る。
この先にあるのは動物園。
当然、閉園している門の前に、浩介は堂々と立った。
「なあ! どうしたんだよ!? 急にパンダでも見たくなったのか?」
雰囲気を変えるためのジョークにも反応せず、一点だけを呆然と見つめたまま。
「浩介?」
改めて顔を見ると、その目に生気がない。
時刻は3時28分。
いったいなんの目的で、ここへやって来たのだろう。
と……。


