その日の放課後。
終礼が終わると、すぐに部室へ向かった。
自分専用のロッカーを開け、相棒の一眼レフを連れだす。
「おい、どこ行くんだよ!」
「今日、休むわ。行くトコあるから」
学校を出てバスに乗り、ある女子高前の停留所で降りた。
絶好のポイントでレンズをのぞいて、下校のピークまっただなかの集団にピントを合わせる。
「ちがうな……あの子も……」
しばらくすると、思わずシャッターを切りたくなるような笑顔を捉えた。
「あれだ!」
“里恵”と呼ばれていた女の子。
葬式のときとは打って変わった明るい表情。
妹の死をすでに過去にされたようで、くやしい。
「ねえ!」
つい声を荒らげ、気付いた里恵に大きく手招きをする。
僕を見ていぶかしげな表情をしたあと、談笑していた友達に別れを告げて、里恵は小走りで駆けよってきた。
「ことみのお兄さんですよね? ……どうして、ここに?」
「あの話の続きを訊きたくて」
「あの話?」
「妹の葬式のとき、見せてくれただろ? “ダルマさんが転んだ”の掲示板」
歩きながら僕がそう言うと、里恵は思い出したような顔をし、そのすぐあとで視線を落とす。
「聞かない方がいいですよ。あの都市伝説は本当にヤバイんで……」
僕からすれば、履いている下着が見えそうなほど短いそのスカートの方が、よっぽどヤバイ。
「あれ、もう一度見せてくれる?」
僕は彼女の警告を無視して言った。
「えぇ……」
ためらいながらも出されたのは、ピンク色にデコレーションされたスマートフォン。
キラキラした画面枠の中に映しだされた文字の羅列に、意識は釘付け。
「呪われし禁断のゲーム……か」
……やっぱり、おもしろそう。
単純に、そう思った。
「これのせいで、同級生が5人も死にました。私がこんなの見せなきゃ……」
里恵は涙ぐみ、言葉を震わせる。
「落ち着いて。ほら、あの椅子に」
たまたま通りがかった公園の椅子にいったん彼女を座らせ、ゆっくりと話を聞くことにした。


