ズズッ––

       ザザザッ――


「ッチ……」

こんなに走ったあとなのに、すぐ近くにいるような感覚。

……隠れるしかない。

僕は教壇の下のスペースに身体をうずめた。


トッ――トンッッ―― 

  チュルルッ――

  ズズッ――
 ザザザザザッ――


「来゛るな来る゛な来るな゛来゛る゛な゛!」

必死に願う中、耳に詰めた指の蓋を取る。


    トンッ――トッ――

ザザザザザッ――


彼女との距離が測れない。

なぜならその音は、黒板の上のスピーカーから流れていたのだ。


ズズッ――
     ザザザザザザザッ――

「ひ゛ぃいい゛ぃ……」

両膝に目を押しつけ、恐怖の嵐が過ぎ去るのをじっと待つ。

伊達磨理子の怨念は浄化されたはず。

僕が父親を殺したことで、よみがえらせてしまった。

この世に、新たな怨念を携えて。


――…………。


……ん?


――…………。


「んん!?」


奇怪な音が、消えた。


……なんだ。


「ただの脅しか……」

そう安堵し、視線をあげたとき。



「っう゛ぅ゛わああ゛ぁーーーっ!!」



教壇の上からのぞきこむ、磨理子の青白い顔。