カメラのシャッター。それはすなわち人間でいうところの、“瞬き”だ。

3枚目が映しだしていたのは、伊達磨理子の頭。

そして、ひとすじの糸は髪の毛。

「ぁ゛あ゛、ま゛……磨理子」


――ゴボガボゴボッ。


おぞましい瞳。細い首すじ。長い黒髪。

写真の中から、呪いの化身伊達磨理子が現れた。

まさに、戦慄の宴。


――ドシャッ!


四肢のない胴体が、床へずり落ちた。

へたりこむ僕の目の前に、彼女がいる。


――…………。


首を傾け、倒れている父親を見つめていた。

おそらく、泣いているのだろう。

いやそれは、激しい怒りか。

髪の毛が小刻みに揺れはじめる。

僕は、全身の汗が瞬時に引いていくのを感じた。


トッ――トンッッ―― 
       チュルルッ――


「は、あ、っ、来るな゛あぁーっ!!」

とっさに立ちあがり、この場から逃げだす。

部室のドアを開けて、廊下に叫ぶ。

「誰か゛ぁあー! 助け……ッ!?」

彼女の仕業か。

まだ暗くなる前の校舎に、誰もいない。

人の声すら聴こえない。

あるのは……。


    トッ――トンッ――


 チュルルルッ――


身体を這いずるこの音だけ。

……殺される!!

もつれる足。何度も転倒しながら、僕は廊下を走った。

無我夢中で、向かう場所を考える余裕もなく。

だが、身体が覚えていたのだろう。

我に返ると、自分の教室の前にいた。