妹の事件について現時点で判明しているのは、殺害現場と方法、推測される犯人像。

遺体が見つかった川のほとりから少し上流に、妹の遺留品が点在していた。

それに加え、川辺に沿って生えている草が数ヶ所、重い物が乗った跡のようにへし折れていた。

状況証拠から、警察はその場所を殺害現場と断定。

死因は首を絞められたことによる窒息死。

殺害後、犯人が遺体を川に流した可能性が極めて高いらしい。

それが偶然、人の目に触れない所へ流れ着き、死体の発見が遅れてしまった。

「長い時間、水に浸かっていたせいで、正確な死亡推定日時は割りだせない。だけどおそらく、捜索願いが出された1週間前にはもう……」

「…………」

「大丈夫?」

「は、はい。続けてください」

「草がへし折れていたのは数ヶ所。おそらく逃げる妹を追いかけ、押し倒し、首を絞めては失敗し、またその繰り返し……だったのかもしれない」

刺激の強い話に、宇治木は僕の顔色をうかがいながら話す。

「多分、犯人は力の弱い女……」

「女!?」

「あぁ」

手口だけをみると衝動的犯行に感じるが、死体の発見を遅らせようと川に流し、日時を誤魔化そうとしている点を踏まえると、計画的犯行も捨てきれないという。

「どちらにせよ、犯人は頭がいい。そして……」

1週間前、行方がわからなくなったのは妹だけじゃない。飼っていた愛犬もだ。

行方不明になる当日の朝、ことみは愛犬と散歩に出かけて姿を消した。

一度、僕の家を訪ねてきたことがある宇治木の見立てはこうだ。