『通り魔に遭ったばかりだろ? 夜中にひとりで出歩いたらあぶない! 今度こそ、お兄ちゃんが守ってやるから』

『プッ! ハハッ、ハハハハッ……。なにそれ!』

『だって約束したじゃないか! ことみをいつまでも守るって。指切りげんまんしたろ!?』

『バカじゃないの? 子供の頃の単なる遊びでしょ! つーか、キモい!』

妹は寒気を感じたように腕をさすった。10月の風はたしかに冷たい。

『ことみが、ことみがお兄ちゃんに守ってほしいってお願いしたんだぞ! 忘れたのか!?』

『しつ゛こい゛! 仮に、そんなくだらない約束してたとしても、ほら見てよ』

僕の前に手を差しだして言う。

『小指はないから、約束も無効。ね?』

『そんな……ウソだ』

生きる意味を失った気がした。

『今すぐ帰って! 友達と会うんだから』

ことみが、遠く離れていく。そんな気がした。

大好きな妹が、僕のモノじゃなくなる。

いや、僕だけのモノにする方法が1つだけ残されている。

『ちょ、っと! なにやってんの!?』

抱えていた愛犬を放すと、土手の下の草むらの中へ消えていく。

妹はそれを追う。僕も、それを追う。

『キャッ!』

回りこんで、妹の前に仁王立ち。

『な゛、なに!?』

『……ことみ、アイシテル!』

僕は妹を押し倒し、首を絞めた。

『ぐ、ぐぎぐ……』

そりゃもう、とても苦しそうな表情をしている。

『へぇ~、そういう顔するんだ!』

苦悶に満ちた顔にも“えくぼ”が映えていた。

新たな収穫。

だが、僕の独占欲はまだ満たされない。

わざと手を放すと、妹は這いつくばって逃げた。

『ゲホッ、ゴホッ! 殺す気!?』

振り返るその目は、悪魔を見るよう。

『こ、来ない゛で! 叫ぶよ!』

僕はことみに馬乗りになり、再び首を絞める。

『愛してる゛よ。アイ゛シテル……』

胸もとにできたかすかな空間が想像力を極限まで刺激して、しなやかに伸びる脚がジタバタと暴れ、興奮は絶頂。

『ガッ……く゛、ゃ、や、め……て』