「もしかして、彼には個人的な恨みでもあったのかな?」

「…………」

――チャリーーンッ。

しばらく沈黙したあと、祐一郎は突然、ピンセットを流しの傍に投げた。

「フッ、ハハハハッ! クッハハハッ……」

そして、腹を抱え、狂ったように嗤う。

「さすがは元刑事だ」

「……磨理子の呪いを利用して3人を殺した。その罪を認めるんだね?」

私の追及に、彼はキッと睨み返す。

「だから、なに?」

「な゛!?」

「僕は、痛みでもがき苦しむアイツらを楽にしてやったんだ! むしろ感謝してほしいぐらいだよ。そこまで言うなら、証拠を出せよ! 僕が3人を殺したっていう証拠を!!」

「それは……ない」

「フンッ、ご苦労様。作業の邪魔なんで、帰ってもらえますかねー? “元”刑事さん!」

これでよくわかった。

彼はやはり、人間という化けの皮を被った悪魔だと。

「カンちがいしてもらっては困るよ。ここからが本題だ」

「え!?」

昨日、宇治木に電話をさせ、あることを確かめさせた。

長谷川菜摘の元に、祐一郎が現れたか。

結果は、ズバリ的中。

彼女に鎮静剤を投与するため運んだ病院に、この男は姿を見せていた。

「復讐のため。刑事にはそう言ったみたいだね」

「ああ! 大切な妹を殺したんだ! 憎んで当たり前だろ?」

興奮なのか、はたまた焦りか。

祐一郎は喉が割れんばかりに叫ぶ。

「本当にそうかな? 口封じだったんじゃないのか?」

「……な、なにが言いたい!?」

ついに、祐一郎を追いつめるときが来た。



「妹、前原ことみを殺したのは……キミだね?」