この前日にも上野にある動物園内で似たような事件が起こっている。
被害者は両手足をライオンがいる檻の中に突っ込み、喰いちぎられた。
警備員が駆けつけたときには、すでに死亡。
「このふたつの事件の被害者は、ある共通点があった」
「共通点……」
「どちらも、国民的アイドルグループの熱狂的なファンだったのさ」
「それは大袈裟じゃないですか? ファンが多いから、国民的って称されるわけだし」
「たしかにキミの言うとおりだな。気になって、今日行ってみたんだ。そのアイドルグループが拠点を置く秋葉原に」
「……で?」
オタクと呼ばれる者たちは、情報の共有を密に行っている。
誰が“古参”、いわゆる昔からのファンか。
レアなグッズを持っているのは誰か。
そして、誰と誰が仲が良いのか。
「上野で亡くなった子の写真を見せて回ったら、彼を知っているという人に出会ったよ」
「…………」
「そこで驚くべき事実もわかった」
「ぇ!? ど、どんな?」
よく一緒にいるという他4人の中に、翌日の町工場に続き、火事で亡くなっていた者が含まれていた。
縁もゆかりもない居酒屋の火事。
従業員が救急車を呼んで戻った時、彼は火だるまになって暴れていたとのこと。
直前、知人らしき男が現場にいたが、燃えさかる店内にその姿はなかった。
警察は、何らかの事情を知っていると思われる知人らしき男の行方を、今も追っている。
「キミなんだろ?」
「え?!」
「これ以上ウソを重ねても、苦しくなるだけだぞ! その顔の汗が物語ってる」
「……た、たしかに友人でしたよ。上野も町工場も、そして火事に遭ったヤツも」
「やは……」
「だからなんですか?! 彼らを殺したのは呪いですよ! あなたがよく知っている、伊達磨理子っていう女の」
「呪い……か」