「……なに、コレ? なんかの掲示板?」
呆気に取られている僕の肘を、強い力で引っぱる人物がいた。
「やめろ!」
宇治木だ。
「なにするんですか! 放してください!!」
「キミは関わらない方がいい!!」
手から携帯を奪って持ち主に返し、そのまま僕を引きずるようにして遠ざけた。
「放せって言ってん゛だろ!」
腕を振りおろすと、宇治木は潔く手を離す。
「ぁ……」
もう少し執拗にされると思っていたのに拍子抜け。
すると彼は、親指で車をさして言った。
「捜査の状況を知りたいんだろ? 特別に教えるよ」
……なるほど。
切り札を出してきた。
「じゃぁ……」
場所も車だけに、ここはあえて乗ることにしよう。
妹の同級生にはいつでも会えるが、貴重な情報源の彼には、もう二度と会えないかもしれないから。
――バタンッ。
ドアを閉めると、一瞬で車内はせまい密室と化す。
吸った気になるほど、こびりついたタバコの臭い。
コンビニの袋から飛び出す割り箸。
決して居心地がいいとは言えない。
「こんなこと、話してもいいのかな……」
宇治木の表情には迷いがあった。
当然だ。
僕が一般人で、それも感情的になりやすい、遺族だから。
そして、もうひとつ。
殺人事件ともなれば、僕が犯人の可能性もゼロじゃない。
「僕を信じてください! なにか手掛かりになりそうなことは、なんでも話しますから!」
「……わかった」
熱意に負けたのか、宇治木は重い口を開く。


