「磨理子と連絡が取れないの……」
君江は泣きながら私に言った。
「たまたまだろ!」
落ち着くように促しながら電話を掛けると、
《おかけになった電話番号は、現在使われておりません。番号を……》
ただ電源が切られていただけだろうと思っていた私は、呆気にとられた。
すぐに敏也の身元をデータベースで確認。
「な゛!? なんだ、ここれは……」
傷害。恐喝。レイプ。覚せい剤使用。
ヤツは文句なしのクズだった。
私は単身で大阪に向かう。
府警協力の下、敏也の令状を請求。
警察の規定には、身内が関わる事件を捜査できないという規則がある。
が、私は県警幹部の立場を利用して、磨理子が監禁されているかもしれない敏也の家の捜索に同行した。
『兵藤さん! 兵藤さん!!』
家に入ってから1分もしないうちに、ひとりの捜査員が青ざめた顔で私を呼ぶ。
呼ばれた部屋に入ると、
「ま、磨理子……」
しばらく、脳が目の前の光景を拒否する。
「磨理子なのか?」
6帖ほどの1室。ベッドの上にポツンと横たわる、手足のない全裸の女。
彼女は言った。
「ぉ……お父さん……」
それは、大切な大切な娘にまちがない証。
「ご、めん……ね」
力なく、そう言い遺して、意識を失う。
これが、最期に聴いた娘の声。
振り返ると、部屋の前で手錠を掛けられている敏也。
「フッ」
薄笑いを浮かべるヤツに、気付けば馬乗りになって殴りつけていた。
「貴ッ様ぁ゛ー!」
周りは家族を持つ者ばかり。それを止める捜査員はひとりもいない。
「悪魔め、悪魔め!!」
何度と拳を振りおろす。と……。
「俺は、本当の悪魔を知ってるぜ」
血まみれの口唇がハッキリと動く。
「アンタだけに教えてやるよ」
耳もとでささやかれた、ある場所。
そこには、小さな鍵があった。
私はこのことを報告せずに、鍵をポケットの中に入れて病院に向かう。


