白い肌に浮き出た鎖骨を撫で、胸もとのペンダントへ指を添える。

母親とそう歳が変わらない君江の仕草に、女を感じて、視線を逸らした。

「いったい、どんな発見をしたの? ねえ、大橋く~ん」

俺の手を握って熱い視線を送り、秘密めいた艶のある声で、こう付け加える。

「教えてくれたら、アタシなんでもしちゃうな……」

これには、横にいた祐一郎もたじたじ。

冗談だとしても、ウブな俺たちには少々刺激が強すぎる。

兎にも角にも、母親は偉大だ。

いざとなれば、その身を武器にしてでも、愛する我が子のことを知りたいと強く願うのだから。

「わわ、わかりました! 実はですね……」

動揺を隠そうとしたが、説明がしどろもどろに。

話の構成が悪かったのか、彼女は俺がしゃべるにつれて、気のない相槌しか打たなくなった。

「と、いうわけです」

「……ふ~ん。そ」

あからさまに、態度が急変。

鏡を使った方法で呪いを終わらせる話には、いかにも興味が無いといった感じ。

察するに、君江は期待していたのかもしれない。

俺の話が、いまだ謎のベールに包まれたままの“顧客リスト”についてだと。

娘の無念を晴らすには、そこに書かれている鬼畜たちの名を知る必要があるからだ。

「あの!」

言うべきなのか。宇治木から教わった情報を。

「なに? まだ他にあるの?」

……いや、ダメだ。

中途半端な情報は、ただ単に消化不良を引き起こすだけ。

「ごめんなさい。なんでもありません」

ちょうどそのとき、缶コーヒーを片手に、警備員と職員が戻ってきた。

残りを一気に飲み干して警備員が言う。

「アディショナルタイムが長すぎたかな?」

これにて、面会終了の笛が鳴らされた。