「千尋ちゃんとしか食べたくないし」

そんな事を言う北本先輩は、1か月前まで他の女の子と食べてたと思う。


「じゃあ、俺も参加!」

何処かから現れた渋沢先輩に、紀伊ちゃんは大袈裟な溜め息をつく。

「渋沢先輩は迷惑です。引き連れてる女の子達とどうぞ」

紀伊ちゃんの目線の先は、渋沢先輩が連れてる女の子達。


「あ、みんな、ごめんね。今日は紀伊ちゃん達と食べるから」

あっさりと女の子達に向かって言う渋沢先輩。

ちょっと、そんな言い方をしたら、紀伊ちゃんが悪者になるじゃん。

女の嫉妬は女に向かうんだよ。


「えぇ~!」

「慧君、さっき一緒に食べようって言ったのに」

「私達と食べようよ」

ほら、女の子達からブーイング起こってますよ。


「ごめんね? 気が変わったから」

渋沢先輩は笑ってない瞳でにっこり笑う。

冷たい空気を纏ったそれに、女の子達は悔しそうに顔を歪める。


そして、みんな紀伊ちゃんを睨み付ける。

紀伊ちゃんのせいじゃないのに。


「ちょっと、渋沢先輩」

「なに? 紀伊ちゃん」

「迷惑なんですよ。こう言うの。逆恨みされても困るし」

紀伊ちゃんは無表情で渋沢先輩を見る。


「ハハハ、逆恨みって。そんな事になったら俺が守るよ」

その言葉はどこまで本気なんだろう。

冗談めかして吐く渋沢先輩の言葉は信憑性がない。


「結構よ。護身術ぐらい習ってるわ。女の子ぐらいねじ伏せるのは簡単よ」

そう紀伊ちゃんは、小さい頃からやってた合気道の腕前が師範レベルだ。


紀伊ちゃんの言葉に渋沢先輩の連れてきた女の子達は青ざめる。

力じゃ勝てないからって、姑息な手段に出たら、占いで不幸に導いちゃうからね。

私だって紀伊ちゃんを守る。


「千尋ちゃん、行こう。席が無くなるし」

北本先輩は、私の手を引いて歩き出す。


「ちょっと、北本先輩、離してください」

自然に手とか繋がないで欲しい。


「ダメだよ。千尋ちゃんが誰のものか教えとかないとね」

ウインクされたけど、

「北本先輩のものでもないですけど」

と唇を尖らせて抗議した。


「まぁまぁ、それは追い追いね」

「何いってるんですか」

白い目で見ても、北本先輩は楽しそうに笑ってる。


「あぁ、ちょっと待ちなさいよ」

紀伊ちゃんも追い掛けてくる。

もちろん、その後ろを渋沢先輩もついてきた。