元の自分に戻ってから、視線がやたらと痛い。
前は占いババとか呼ばれてたのに、今では知らない人からも千尋ちゃんって呼ばれる。
みんな、どんな心境の変化だろうね。
私の中身は前とちっとも変わってないって言うのに。
それと、北本先輩がやたらと構ってくるようになった。
前は声をかけられたりしたら面倒臭いと思ってたのに、今はまぁいいか、って思えたりもする。
北本先輩が前を向く切っ掛けをくれたからかも知れない。
現金だけどね。
「千尋ちゃん」
ほら、今日もやって来た。
北本先輩と共に女の子の嫉妬に満ちた視線もやって来るんだけど。
人間はそんな凄い目付き出来るんだなぁと思う。
「なんですか、北本先輩」
「倫太郎って呼んでよ」
「呼びませんよ」
「相変わらずのツンだな」
自棄に嬉しそうな北本先輩。
別にツンとしてる訳じゃないけど、北本先輩が相手になるとこんな風に返してしまう。
「北本先輩もよく飽きませんね」
隣で紀伊ちゃんが冷たい目を北本先輩に向ける。
「飽きるわけないし。どんどん好きになる」
惜しげもなく恥ずかしい言葉をよく言える。
ここのところ、会う度に好きだと言われる。
何かが吹っ切れたのか、北本先輩の告白擬きは潔い。
本気の好きじゃないのは分かってる。
だから、冷たく返してしまうんだ。
遊び人の北本先輩なら、好きって言葉も軽く言えちゃうような気がするし。
「千尋ちゃん、今日も可愛い。好きだよ」
「・・・っ・・」
人前で恥ずかし過ぎる。
社交辞令だとしても、胸がドキッとしちゃうんですよ。
「今からお昼だろ? 一緒に食べようよ」
「ダメだと言っても来るんでしょ?」
紀伊ちゃんは呆れ顔で言う。
「もちろんだよ」
付いてくるの決定なんですね。
「北本先輩は、私達とじゃなくても他の女の子のいるんじゃないですか?」
ほら、チクチクと刺さる視線を向けてくるそこの女の子達とか。
チラッと彼女達を見たら、バサバサした睫毛で威嚇された。
あれって、付け睫かな?
全然関係ない事が思い浮かぶ。
目が重たくないのだろうかと、要らぬ心配まで。