今日の私の星占いは、問題なかったはずなのに。

一日の終わり近くに、こんな遭遇があるなんて最悪だ。


レジを打ちながら、心の中で悪態をつく。

バイトも後、30分で終わりだと言うのに、まさかの登場だ。


「あ、32番の煙草もちょうだい」

北本先輩の声に反応したのは、客の対応を終えた良樹くん。


「32番ですね。千尋ちゃん、はい」

後ろの棚から煙草を取り出しくれた良樹くんが、カウンターに置いてくれる。


「ありがと」

良樹くんにそう返してバーコードを読み取ると、レジが年齢確認を求めた。


「年齢確認をボタンを押してください」

「はいは~い」

北本先輩はレジの画面を慣れた手つきでタップした。


「合計三点で、860円になります」

ビニール袋に詰めた商品を、北本先輩の前に置いた。


「じゃ。千円で」

デニムの後ろポケットから取り出した財布から千円を出すと、私に差し出した。

「千円おあづかりします。140円のお返しとレシートです」

素早く会計ボタンを押して、お釣りを手渡した。


「ありがと。ね、本当にバイトいつ終わるの?」

「ま、まだまだです」

「そっか~残念」

そう言いながらも顔は残念そうじゃないですね、北本先輩。


「ありがとうございました」

マニュアル通りに頭を下げた。

これ以上、話はしませんの意味を込めて。


「じゃ、またね」

ヒラヒラと手を振って去っていく北本先輩。

その背中を見つめながら、安堵の溜め息をついた。


「凄いイケメンですね。知り合いですか?」

すすすっと寄ってきた良樹くん。

男から見ても北本先輩はイケメンなんだね。


「女ったらしだけどね。大学の先輩だよ」

「まぁ、イケメンはそんなもんですよ」

「ふ~ん、そうなんだ」

どうでもいいけど。


「中々、あんなレベルの高いイケメンは居ないですけどねぇ」

と言う良樹くんは爽やかで愛嬌のある親しみやすい笑顔で笑う。


「うちの大学もう一人、あのレベルのいるけどね。私、ごみ集めに行ってくるね」

そう告げて、新しいごみ袋を持ってカウンターを出た。