「占ってぇ~きゃっ」

とやって来た百々(モモ)ちゃんは、私の居る机の前で大きくつままづいた。

彼女は、ちょっと天然の混じったドジッ子。


同じ高校から入学した子で、たまにこうやって話しかけてくる。


「大丈夫?」

「うん」

テヘヘと笑う百々ちゃん


「今日は星座占いだけど、それでもいい?」

早見表を取り出しながら言う。


「うん。お願い。告白したいの」

両手を顔の前で合わせて頼んできた。

百々ちゃんはまた誰かに恋してるらしい。

移り気な百々ちゃんは、いつも恋多き女の子なんだけどね。


「じゃあ、百々ちゃんの生年月日教えて」

紙と鉛筆を彼女に手渡す。


「了解」

さらさらと紙に文字を書く百々ちゃん。


「じゃあ。占うね」

百々ちゃんの生年月日を見て、星座占いを始める。


ワクワクした様子で私を見てる百々ちゃんに、ちょっと、緊張した。


「えっと、百々ちゃんの今日の運勢はあんまりよくないかも。告白はやめた方がいいかな。あ、でも、家族運はいいから、大人しく家に帰ったらいいことがあるかも知れないよ」

「そっか・・・分かった。今日は止めとく。地ぃちゃんありがと」

肩を落として溜め息をついた百々ちゃんは、とぼとぼと帰っていく。

背中から哀愁が漂ってるよ、百々ちゃん。


また、次の恋を見つけてね。



「あら、また百々が来てたの?」

「お帰り、紀伊ちゃん」

講師の先生に呼ばれて席を外してた紀伊ちゃんが戻ってきた。


「ただいま。あの子、また誰かに恋してるの?」

呆れ顔で百々ちゃんの背中を見据える紀伊ちゃんに、

「そうみたい。今日、告白したかったらしいけど。占いの結果が良くなかったんだよね」

と返す。


「なら、仕方ないわよ」

「だよね」

「さ、用事も済んだし帰ろうか?」

「うん」

筆記用具を鞄にしまって立ち上がる。



「今日はカテキョでしょ?」

「うん。夕飯作ったら出掛けるね」

「了解。ぐれぐれも気を付けなさいよ、北本先輩に」

「分かってる」

そんな会話をしながら、私達は帰路についた。