コンコン


返事がなかった。


こんな昼間から寝てんのか?


それとも…まだ目が覚めてないとか…。


コンコン!


2度めは少し強めにノックしてみる。


それでも返事がないから、とりあえずドアを開けると、中は無人だった。


「あ。愛のお見舞い来た人?」


廊下から、関西弁のイントネーションの女が声をかけてきた。


「そうだけど」


俺が振り向くと、車イスに乗った、色黒の女がいた。


「さっき屋上行くの見えたから、多分今屋上やと思うで。うちがこの前教えてん。ホンマは立ち入り禁止やねんけど、一人になりたいときとかにこっそり行くって」


…屋上か。


「行き方─」


「そこの階段上ってったらあんねん!けっこうスッキリするからおすすめやで!ほなまた!」


マイペースというか自己チューな女……。