見慣れた天上。


それが視界に入った瞬間〝あぁ、死ななかったんだ〟という安堵が襲ってきた。


見慣れた天上というのは、もちろんいつもの病室だ。


そして、次に視界に入ったのは、ベッドの隣の椅子に座ったまま、眠っているお母さん。


その頬には涙の跡が残っていた。


今何時なんだろう。


時計を確認しようと体を起こそうとしたとき、自分が酸素マスクに繋がれてることに気づいた。


それに、何だか体がダルい。


本当に終わりが近づいてきてるんだ。


私の人生の終わりが。


とりあえず、ナースコールを押してみた。


あんなことがあったのに、驚くほど冷静な自分がいた。


自分のことは十分理解してるんだろうな。


もう、長くないことを。