部屋から出て、用があるホテル内の店へ向かってる途中。


親父の秘書の森田さんがこっちに向かって歩いてくるのが見えた。


森田さんは秘書だけど、あの女と、そいつに洗脳されてる親父に執事のように扱われてる。


「冷様」


気づかなかったフリしてそのまますれ違うつもりだったけど、やっぱり声をかけられた。


「何?」


生活費出してくれてるから、さすがに無視する気にはなれなかった。


それに、森田さんには小せぇ頃世話になったし。


「先程言いかけたことで─」


「俺はもうあんなクズとは関わらねぇつってんだろ」


親父に関わる=あのクズとも関わんねぇといけねーんだから。


「ですが─」


「もう放っとけよ。俺のことは。向こうだって俺のこと息子だって思ってねぇんだろ!こっちだって思いたくもねぇんだよ!だから放っとけ」


親父と普通に暮らしていきたかった。


あんな女なんかが来なかったら、普通に暮らせてたのに。