冷愛冷涙-Reiai Reirui-

ロビーのイスに座って待ってるお母さんを呼びに行くと、一瞬不安の色が現れた表情をされたけど、すぐにいつものお母さんにもどった。


お互い何も言葉を発しないで、再び近藤先生の診察室に入った。


周囲の空気がピンっと張りつめ、息がしづらい。


「どうぞ、おかけください」


近藤先生の柔らかい声が、部屋に響く。


だけど緊張は和らぐことなんてなかった。


この空間でそんなことはあり得ないことなんだ。


緊張が和らぐなんて。


「愛さんですが…。簡単に言うと、心臓病が発見されました」

 
何を言われたのか、瞬時に理解することは、どんな難題を解くよりも難しいことだった。


心臓…病……


心臓病…?


あの、心臓病なの…?


「治るんですか?」


この空間には似合わない、しっかりとした口調。


無理しているように聞こえた。


「今後の治療方法によりますが、完治はしないと思ってください」


今……何て言った…?