「放っとけるわけねぇだろ。行くぞ。出口で待っとけば大和来るから」


冷は私の手首を掴んで歩き出す。


「離して」


倖さんに触れた手で触ってほしくない。


………俗に言う〝嫉妬〟の感情だということに気づくのに時間はかからなかった。


嫉妬してるってことは、私は冷のことが好きなの?


人を好きになったことがないから、好きという感情がどんなものなのかわからない。


けど、もしかしてこの感情??


どうせ死ぬ私に、そんな感情いらないのに……。


「………詮索されたことがそんなにムカつくのかよ。だったら勝手にしろ。もう知らねぇ」


冷は、私の手をパッと離して人ごみの中に消えてしまった。