身代わりの姫



王女の部屋に入り、後ろにいたマアサに顔を向けて聞いた。


「リリアはこの部屋で亡くなった?」


「はい。床に………私が入ったときには、もう………」


「そうですか。その場所にテーブルを置いて、花を絶やさないようにしてください。

私は、リリアであって、今までのリリアにはなれないのです。


アリアは……」


「アリアは、明日、埋葬されます。
シリルにも連絡をして、帰らせました。

あなたは、今までの病弱なリリアではなく、あなたらしいリリア様になっていただければ構わないと思いますよ。


王女付きの侍女は、まだ決めていません。結婚の発表まで私が付き、それからは新しい侍女が付きますが、気が合うのでしたら、バルテモン国に連れて行っても良いのです。
連れて行っても一人だけ、ですが、もしかするとバルテモン国から慣れるために、と侍女を寄越すかもしれません。


どちらにしろ、あなたの自由になさってください。


おそらく、公務は無く、打ち合わせや、結婚準備になると思います」

そこまで言って、言葉を切ったマアサを見つめた。



「………リリア様を助けられず、申し訳ありませんでした」


マアサも悲んで、悔いている。

リリアは、何を望んだのだろう。



2度会ったジルベール王子を思い出していた。


リリアならどうするか、考えても仕方ない。

私は、王家で育ったリリアではない。

そう思いながら、目を伏せてゆっくりと首を横に振った。