軽く髪を引っ張ってジルが言った。


「お前は…………俺が、どれだけ心配したと思ってる?
あのとき城も、攻撃された。

1番安全な場所に、逃したはずだったのに、いなくなっていて、やっと戦争の後片付けが終わったのが半年後、見つけるまで2年半。

ここは、軍事基地が近くにある。
あの時、城の周りだけでなく、この辺りにも軍艦が来ていたことに気付いたのは、お前を城から出してからだった。

安全なところに逃したはずだったのに、結局危険な場所に逃げてたなんてな。

ここにいることを知らなかったこの3年間、俺だけじゃない、バルテモンもシュリベルトも王家が心配したんだぞ」


怒った言い方は、本音なのだろう。

私は海に視線を戻して言った。



「人違いですわ。私は心配されるような人ではありません。

リリア・リオアーナ・サリ・シュリベルトは亡くなりましたよ」



一瞬の沈黙の後


「俺は、アリア・レオーナ・サリ・シュリベルト・バルテモンを探していた」



穏やかに、ジルが言って目を見張った。


「……………もう、知っているのですね」  




「ああ。大体は聞いた。

リリア姫は体が弱かった。双子で引き離されたお前が亡くなったリリアの代わりのリリアとして嫁いできた、と」


ジルの顔を見た。


「そう、ですわ。

リリアが生きていたとしても、私が嫁いできたかもしれません。


騙して、すみませんでした」



私を見たジルが言った。



「お前の幼い時の話を、聞かせてくれないか?」 


聞いてどうするのだろう?



そう思ったが、大きくため息をついて話し始めた。