今日も特にすることも無く、ボンと庭の散策をしていた。


広い王城の裏側の東側が私の住む館で、東の館は王城の建物より東に少し建物の半分がはみ出している。

東の館の南側の回廊より東側は広場になっていて、午前中はよく陽があたる。


秋の気候に変わりつつあることが、幾つかの落葉樹の葉の勢いが無くなっていることで分かる。


1メートルほどの木の枝を拾って、剣を振り下ろすように振ってみた。


「ちょっと、あっちを向いていてくれる?」

「はぁ……?」


木の裏側に行って、木の棒を大きな木の幹に振り下ろして当てた。


何回か繰り返すと、持っていた棒を木の後ろに置いて、行きましょうか、とボンに声をかけた。


「妃殿下、スッキリしましたか?」

「バレてたの?」

「ええ、驚きましたけど」

「………みんなには内緒にしてくれる?ちょっとした発散だから……」

クスクス、フフフフ、ハハハ、と2人で笑った。

そのまま歩いて中央の館に続く回廊が見えるところで中庭を見回した。


その時、花壇を手入れしていた花師が来て

「畏れながら、妃殿下にどうぞ」

と摘みたての花を束ねたものを受け取った。

「ありがとう、嬉しいわ」

「いえ、我々もご結婚を喜んでおります」

「ありがとう。あなた方が手入れをして、色々と花を生けてくれているから、皆、気持ちよく過ごせるのですわ。
これからもよろしくね」


一礼する花師から離れて、館へ戻り部屋に花を飾った。