知らなければ、良かったのか?
はじめから、側室を作ることが決まりだと、そう言われたら良かったの?
なぜ、こだわるのだろう?
私は……政略結婚なのに。
軽い昼食後、来ていた各国の王太子と謁見をした。
ジルと寄り添って笑顔を振り撒いた。
最後に、兄が現れた。
ジルと握手をして、私をだきしめた。
「無理するな」
小さな声で、囁いた言葉を残して、歩き去った。
溢れそうな涙を兄を見送る振りをして、拭った。
「お疲れ様です、殿下、こちらへ」
ジルを見送ろうと、体の向きを変えると腰に手を回され、東の館の通路まで一緒に来た。
「ありがとう………」
「………俺は、まだ仕事があるから戻るが………」
「ええ、大丈夫ですわ、行ってらっしゃい」
城へ向かうジルを見送った。

