アリシアは大きくうなずきながら戦利品を見せた。



「良いハーブが安くで手に入りました。あとはこの工芸茶ですね。知り合いに教えてもらったんですけど、面白いので今日のティータイムにお出しします!」


「それは楽しみだ。だが、それは明日にとっておこう。今日のティータイムは取りやめだ」


「え?」



 今までティータイムを中止したことなんてなかったのに。

 戸惑うアリシアを見て、イルヴィスはどこか楽しそうに目を細める。



「せっかくの機会だ。今日は二人で街を散策しよう」


「二人で、街を?」



 もし他人の話であれば、これがいわゆるデートの誘いだと分かっただろう。

 だが自分のことになった途端、その手のことに鈍感になるのがアリシアである。



「構いませんけど……」


「なら決まりだ。今日一日、私のことは『イル』と呼んでくれ」


「イル……様?」


「呼び捨てで良い」


「そ、それはさすがに」



 人目を欺くためとはいえ、さすがに一国の王子を呼び捨てにするのはハードルが高い。

 様付けで勘弁してもらおう。



「なら、わたしのことは『アリア』と呼んでくださいますか?」