(ハーブは安いし珍しい物はあるし、最高!)



 そうやってほくほくと軽い足取りで歩いていると、誰かの肩が強くぶつかった。

 リリーが忠告していたが、確かに人が多い。


 なるべく人にぶつからないよう気をつけよう。そう思った瞬間、アリシアの背後から数人の子ども達が駆け抜けて行った。



「わー、待て待てー!」


「きゃはは!早く早く!」



 こんな人混みの中を走って大丈夫だろうか。注意しようかと口を開きかけた時──



「ま、待ってよ〜……うわっ!」



 遅れてきたらしい子どもが一人、後ろからアリシアにドンとぶつかった。

 子どもの体重なので軽いものではあるが、いかんせん勢いが強かった。



「わ、わ……」



 足がよろめき、そのままつまずいて転びそうになる。体勢をなおそうと試みるが、上手くいかない。

 衝撃に備えて思わず目を閉じる。

 しかし衝撃は来なかった。その代わりに誰かにストンと受け止められたような感覚があった。



「おっと危ない」



 アリシアを受け止めた誰かの声。そう低くはないが凛として威厳のある……どこかで聞いたことのあるような声である。