もちろんプレイボーイの自分であれば簡単に話しかけることができただろうが、彼女とはどうしても素の自分で話したかった。


 だがその願いはとうとう学園の卒業パーティーでさえ叶えることができなかった。



 どうにかアリシアと会う方法はないだろうかと、悶々と日々を過ごした。そんな中、突然兄イルヴィスに話があると言われ呼び出された。



「リアンノーズ家の三女であるアリシア嬢を、正式に私の婚約者とすることに決めた」



 優秀で合理的だがどこか冷淡だと言われる第一王子。

 そのイルヴィスが、見たこともないくらい穏やかで優しい表情をを浮かべ、そう告げた。


 ロベルトはあまりのショックで、頭を鈍器で強く殴られたような衝撃を受けた。

 はっきりとは覚えていないが、あの時イルヴィスにはどうにかして祝いの言葉を言ったのだろうと思う。





(細くて、小さな手だったな……)



 ──アリシアがここのところ毎日王宮へ訪れているという話は知っていた。

 辛くなるだけだと今まで会わないよう避けていた。だが実際に話せば吹っ切れるものがあるかもしれないと期待して、今日は思い切って彼女を待ち伏せし、話しかけた。



(結局、彼女への想いと、想うことが許されない存在になったという事実を再認識しただけだったか……)



 ロベルトは強く唇を強く噛み、苛立たしげに頭をかいた。