アリシアはその反応を確認した後、そっと息を吐く。そして自分もティーカップに口を付けながら、頭の中でメモをとる。



(カレンデュラも大丈夫、と)



 ハーブティーは独特な風味がある分、好き嫌いの分かれるものが多い。

 もしイルヴィスの口に合わないものがあれば二度と出すわけにいかないので、気をつけて様子を見ているのだが、今のところどのハーブティーも悪い評価は返ってこない。



「殿下は、もとよりハーブティーを好まれていたのですか?」


「……特別好きだと思ったことはないな」


「え?ですが、そこそこ癖の強いものも苦手だとはおっしゃってませんでしたよね?
てっきり、飲み慣れているのかと……」


「まあ、昔いろいろあって、ハーブティーの味に慣れようと努力したことはある」



 イルヴィスはそう言うと、アリシアの表情をちらりとうかがった。だがアリシアが首をかしげると、どこか残念そうに笑う。



「何、大したことじゃない。昔知り合った人がハーブティーを好んでいて、好みを合わせて気を引きたかった……という、そんな他愛ない話だ」


「へぇ……でも、殿下がお話をしたいとおっしゃれば、相手に合わせて気を引くような真似をせずとも、誰でも喜んで話し相手になるのでは?」



 そう聞くと、イルヴィスは少し肩をすくめて見せた。