その後、女4人揃ったこともあり、他愛ない世間話をしながらお茶を楽しんでいた。

 しばらく平和な話が続いていたのだが、突然セシリアによって、アリシアが思わずお茶を吹き出しそうになる話を持ち出された。



「そうそう。旦那から聞いたのだけど、第三王子のデュラン殿下が、黒い髪をした平民の女の子を王宮メイドに採用したんですって」



 黒髪、第三王子、平民出身、王宮メイド。そのキーワードが出てきてしまっては、動揺するなという方が難しい。



(ひ、ヒロイン…!)




 心臓がバクバクと音を鳴らす。持ち上げたティーカップが小刻みに震えており、嫌でも自分の動揺具合が分かる。



「あら、珍しい。平民のくせに、その上気味悪い髪をしてる、って反対する人も多そうなのに」



 王宮に勤めるなどと名誉あることは、それだけで本人や家の株が上がる。王宮メイドなど、中下流貴族の令嬢あたりがこぞってやりたがる。

 もっとも、あわよくば王子の妃にと考える上流貴族の令嬢たちは、メイドよりもっと上の座を狙っているが。



「それが、デュラン殿下はそのメイドをとても気に入ってらっしゃるらしくてね……」


「なるほど、あまり表立って反対できないのかしらね……あら、アリシアちゃんどうしたの?」