「そうよ、これじゃあ何のために馬車で長旅をしてきたのか分からないじゃない」



 レミリアも姉の反応を見て自分がここに来た理由を思い出したらしい。


 二人はティーカップをテーブルに置き、アリシアに向き直った。



「アリシア。イルヴィス殿下との婚約おめでとう。心から祝福するわ」


「おめでとうアリシアちゃん。大した物じゃないけど、姉さんとあたしから」



 レミリアは立ち上がってアリシアの後ろに回り、首にペンダントをかけた。

 銀に細かい細工が施されていて、一目で上等な品だと分かる。



「え、あの……あくまで婚約が決まっただけですよ?結婚祝いでもないのにこんな上等な……」


「分かっているわ、婚約祝いよ。可愛い妹の結婚祝いに、こんなちゃちなアクセサリー1つなはずないでしょ?」


「いやいや、これ絶対高いですよね!?」


「ちょっと経済を回してやったまでよ!」


「そ、そうですか」



 得意げな二人の姉に苦笑いを返し、アリシアはペンダントを眺める。

 シルバーアクセサリーは変色しやすいから手入れに気を使わなければ。



「ありがとうございます。大切にしますね」



 お礼の言葉を口にすると、二人の姉はアリシアに優しく微笑みかけた。