お湯を注いだポットから、独特の甘い香りがふんわり漂う。



「そういえば、この前お医者さまにローズのハーブティーを頂いたのだけど、なんだか酸っぱくて……アリシアちゃんが淹れるのは酸っぱくないわよね?」



 ガラスのティーポットをじっと見ていたレミリアが、思い出したように聞いた。



「恐らくそれはローズヒップティーだと思います。ローズの“偽果”という部分を使ってあるんです。それに対して、これは花を使ってあるので、味は全然違います」


「あら、そうなの」


「ローズヒップも肌にとても良いので、オススメですよ。飲みにくいようでしたら、少し蜂蜜を加えてみてください」


「蜂蜜ね。覚えておくわ!ありがとう」



 抽出されたハーブティーを、ティーカップに分け入れると、さらに香りが広がる。


 ティーカップを受け取った面々は、一口飲んでホッと息をつく。ローズのハーブティーは深みがあって優しい味がする。



「こっちのクッキーはノアが用意してくれたんです。ローズティーともよく合うと思いますよ」


「ええ、これも美味しい!……って、いけない、本当の目的を忘れるところだっだわ」



 クッキーを一枚口に入れ、ゆっくり咀嚼した後、セシリアがハッとしたように手を叩いた。