「アリシア、少しこちらにいらっしゃい」


「……?」



 ティーポットをテーブルに置き、言われた通りに近寄る。すると、セシリアは大きく両手を広げてアリシアを抱きしめた。



「会いたかったわ!可愛い妹」


「姉様……苦しいです」


「だって貴女、全然会いに来てくれないじゃないの。もっと愛でさせなさい」


「愛で……」


「どうせ可愛くない方の妹もすぐ来るんだから、今のうちに独り占めしないと」



 セシリアがそう言ったとほぼ同時に、中からテラスへ通じる戸がガタンと開かれた。



「だ〜れ〜が〜可愛くない方の妹ですって?」


「レミリア姉様!」



 現れたのは、ふんわりした茶色の髪を丁寧にまとめ上げ、海を思わせる爽やかな色彩のドレスを身に纏ったもう一人の姉、レミリアだった。

 レミリアもまた、アリシアの顔を見ると相好をくずした。



「アリシアちゃん!少し見ない間にまた可愛くなったわね!」


「うーん……それは気のせいじゃないですか、姉様。長旅お疲れ様でした」



 リアンノーズ家の次女、レミリア・ハーリッツ。年齢はセシリアの一つ下だが、落ち着きのある大人らしい風貌のセシリアに比べると可愛らしい雰囲気がある。