(お菓子はクッキーを用意してくれていたはずね。あ、お湯がそろそろ準備できた頃かしら)



 アリシアはティーポットにローズを人数分入れ、ノアの元へ行く。

 ついでにお菓子とお湯も運ぼうと思ったのだが、やけどをしては困ると断られてしまった。



「セシリア様はテラスでお待ちになっているとのことです」


「分かったわ。セシリア姉様と会うのもずいぶん久しぶりね。レミリア姉様と違って、会おうと思えばいつでも会える場所にいるのに」



 テラスに出ると、椅子で本を開いていた女性が顔を上げた。

 長く伸びた青い髪を背中に垂らし、切れ長の目からのぞく瞳はアリシアより少し色素の薄いライトブルー。

 身につけたドレスは、飾り気はないが質の良さが分かる艶めきがあり、彼女の落ち着きと美しさを強調している。



「アリシア!久方ぶりね」


「ご機嫌よう、セシリア姉様」



 アリシアを見た彼女は、その落ち着いた大人っぽい表情からは想像できないような、無邪気な笑顔を浮かべた。


 リアンノーズ家長女、セシリア。現在はグランリア王国騎士団副団長の妻で、セシリア・マクラインという名だ。

 アリシアより8つ年上で、2児の母でもある。