「どうぞ。ラベンダーのアイスティーです」



 彼はよく冷えたグラスを受け取り、光に透かすようにして少し眺めてから、ゴクリと一口飲んだ。



「なるほど。爽やかで夏にちょうどいいな。美味しい」



 そう言って、半分くらいまで一気に飲み、テーブルに置いた。


 それだけの動作なのに、彼にかかればものすごく絵になる。不覚にも見とれてしまった。


 イルヴィスはそんなアリシアの視線に気づいたようで、微笑を浮かべながらアリシアを見た。



「どうした?」


「なっ、何でもないです」



 アリシアは頬が熱くなっているのを感じながら、視線をそらし、自分の分のラベンダーティーに手を伸ばす。


 だが、伸ばした手がグラスに届くことはなかった。

 その手は、イルヴィスに柔らかく握られた。



 謎の行動に再び視線を戻したそのすぐ後だった。



 イルヴィスの端正な顔がゆっくりと近付き──アリシアの唇にそっと口付けた。