「えっと……それなら、お湯はわたしが準備するので、殿下は調理場で氷を分けてもらってきてください」


「氷だな。了解した」



 根負けしたアリシアが頼むと、イルヴィスはどこか嬉しそうにうなずく。

 そして、アリシアがお湯の準備を終えて戻ってくるのとほぼ同時に、大きめのガラスのボウルに大量の氷を入れて持ってきた。



「ずいぶん多いですね」


「いきなり訪ねたからか驚かれてな。全部持って行ってくれと渡された」


「あ、あははは……」



 突然王子がやってきて「氷をくれ」などと言われ、騒然とする調理場の様子が目に浮かぶ。

 調理場にいた皆さんには悪いことをしてしまったかもしれない。後でまたお詫びしておかなければ。



「それで、今日は何のハーブティーを淹れるんだ?」


「今日はですね……これを」



 アリシアはテーブルに置いていた瓶を開けてイルヴィスに見せる。



「ラベンダーティーを淹れます。暑いのでアイスティーにしますね」


「ラベンダー、か」


「殿下はラベンダーがお好きなんですよね。お口に合えば良いですが」



 前に、アリシアはどうして自分が婚約者に選ばれたのかと尋ねたことがあった。