寝顔までバッチリ見られている。その上気を使わせてしまった。
「お、お湯沸かしてきます」
アリシアはいたたまれなくなって立ち上がる。とりあえず一人になって落ち着きたい。
しかし、何故かイルヴィスも一緒に立ち上がって言った。
「私も行っていいか?」
「えっ」
「私も何か手伝いたい」
心なしか目がキラキラと輝いているように見える。今までそんなこと言わなかったのにいきなりだ。
(そういえば……)
アリシアはその目を見てふと思い出した。
(何年か前、リリーさんのカフェで知り合った年上の少年も、こんな風に手伝いたがっていたわね)
アリシアがCafe:Lilyに入り浸っていた頃、多くの常連客と知り合ったが、皆大人ばかりだった。
そんな中、珍しくアリシアとそう歳の離れていなさそうな少年が一時期店によく来ていたのだ。
顔も名前もすっかり忘れてしまったが、今頃は恐らくイルヴィスと同じくらいの年齢になっているだろうか。
(まさか……ね)
アリシアは一瞬頭に馬鹿げた考えが浮かび、慌てて振り払った。
王子があんな場所にひっそりとある、庶民向けのカフェに通うなんてこと、あるはずがない。



