(懐かしい。変わっていない……)
彼女が目の前にいる。その事実が予想していたよりずっと嬉しくてたまらなかった。
そして実感した。やはり自分は、彼女のことが好きだ。
「楽しんでいってくれ」
気の高ぶりを悟られないよう、アリシアに告げてすぐにその場から立ち去る。
このまま彼女を見ていたら、色々と抑えが効かなくなりそうだった。
いったい、今まで何が不安だったのだろう。アリアは──いや、アリシアはどこにいようが、どんな名を使っていようが、いつだって間違いなく彼女だ。
「ねえ、殿下っ」
甘ったるい声でイルヴィスに呼びかける周囲の令嬢たちの声は、もう何一つ耳に入ってこなかった。
このとき既に心は決まっていた。
──アリシアを、妃として迎えよう。
その後すぐにわかったことだが、アリシアは4年前にカフェで出会った男のことは覚えていないようだった。
いや、覚えてはいても、その男がイルヴィスであるとは繋がらないのだろう。
どちらにせよ残念ではあったが、それでも構わないとすぐに思い直した。
また一から関係を築いていけば良い。あの頃と同じように、彼女の淹れるハーブティーを飲みながら。



