茶会当日。イルヴィスは案の定、妃の座を狙う令嬢たちに囲まれる羽目になった。招待する人数が多すぎたかもしれない。
適当に彼女たちをあしらいつつ、礼儀として全員に挨拶をしてまわる。
(まだ挨拶を済ませていないのは……向こうに一人でいるあの令嬢くらいか)
何故か他の参加者と離れてお茶菓子を食べることに夢中の令嬢の方へ、軽くため息をついてから向かう。
「こんにちは、本日はご参加ありがとう……ええと」
疲弊していたせいで、お茶菓子を食べているこの令嬢の顔をきちんと確認していなかった。
イルヴィスは顔を上げて彼女の顔を見て──思わず息を止めた。
「アリシア……嬢」
あの頃と変わらない、美しいターコイズブルーの髪とパッチリした青い瞳。
顔立ちはずっと大人びて、美しく成長している。
「今日はお招きありがとうございます、殿下」
彼女がスカートをつまみ、深く頭を下げる。その瞬間、ふわりと優しいラベンダーの香りがした。
(ああ……!)
イルヴィスは目を大きく見開き、口を押える。そうしていないと勝手に頬が緩んでしまう。
心臓がドクドクと騒がしく音をたてている。



