強かだ。この女性、ふんわりした雰囲気だが侮ってはならない気がする。
イルヴィスはそう思いながら、少し冷めてきた紅茶をすすった。なるほど、確かに美味しい。
その日は、帰った後もアリアという少女のことが何故か頭から離れなかった。
そして──
気付けばイルヴィスは、翌日もCafe:Lilyにいた。
あの少女のことが気になっているわけではなく、単にこの店の雰囲気と紅茶の味が気に入ったからだ。そう自分に言い聞かせながら、その翌日も、またその翌日もと通うようになった。
アリアはほとんど毎日店に来ており、声をかければ毎度ハーブティーの試作品を振舞ってくれた。
そうこうしているうちに、次第に彼女とも打ち解けていき、何でもない話を気軽にし合える仲になった。
「イルさん、今日はペパーミントをたくさん摘んできたの!フレッシュハーブティーにするから一緒に飲みましょう!」
名を聞かれて咄嗟に名乗ってしまったが、愛称だけだったため特に王子の身分がバレることもなく、親しげに呼んでもらうことができ、それが嬉しかった。
だがそれより嬉しかったのは、淹れてもらったハーブティーを「美味しい」と褒めると、アリアが幸せそうに笑ってくれることだ。



