「ダメですよ〜新しいお客さん驚かせたら。二度と来てもらえなかったらアリアさんのせいですからね〜」
「ご、ごめんなさい」
「それと、お時間大丈夫なんですか〜?」
「あっ、いけない!もう帰らなくちゃ。リリーさん、また明日っ!」
「はーい、お気を付けて」
少女はバタバタと手荷物をまとめると、慌ただしく店を出ていってしまった。
リリーと呼ばれたこの女性店員は、ニコニコしながら手を振り、テーブルに残ったままのティーポットを片付け始めた。
「……あの少女はいったい何者だ?」
イルヴィスはあ然として言った。
大人しそうな雰囲気すらあった少女が、ハーブティーのことになったら驚くほど饒舌になった。
「ああ、ごめんなさいね。あの方はアリアさんといって、去年ぐらいからほぼ毎日通ってくる常連さんです〜」
リリーは手を休めないまま、にこやかに答える。
「最初は普通にお茶を飲んだりお菓子を食べたりしていたんですけど、ある時、この紅茶の淹れ方を教えてくれって言われまして〜」
「店の者にそれを聞くのか……何と言うか……」
天然なのか、肝が据わっているのか。
「あとはハーブティーの淹れ方なんかも知らないか聞かれましたね〜。自分が育てたハーブを持ってくるからハーブティーにして欲しいって」



