細いながらもしっかりとしたその優しい手で、イルヴィスはアリシアの肩をそっと抱き寄せた。



「私が妃を選び直すという噂が広まっているようだが、それは事実ではない。私はアリシアのことを今後も手放す気はないからな」



 堂々と宣言されたその言葉に、アリシアは心臓がドキリと大きく跳ねるのがわかった。

 たとえそれが、噂を否定するための大袈裟な表現であったとしても、純粋に嬉しいと思った。

 だが同時に少し焦る。



(そんなこと言ったら、また他の令嬢に睨まれるハメになるんじゃ……)



 しかしながら、それは杞憂だった。


 予想に反して湧き上がったのは、アリシアを敵視するものとは真逆の、割れんばかりの温かな拍手だった。