ニーナともあの日以来、本当の意味で打ち解けることができたように思う。同じ前世の記憶を持つ者だというのが大きいのだろう。

 ただ──



「あなた、アリシアお嬢様への口の聞き方をもう少し正すべきではなくて?」


「ちょっとノア……」


「お嬢様はあなたのことを簡単にお許しになってしまったらしいですが、わたくしは決して許していませんから」



 ノアは鋭い視線でニーナを睨みつける。ノアはアリシアのことを陥れるような真似をしておきながら平然としているように見えるニーナのことが腑に落ちないらしい。

 ニーナは気圧されたように口をつぐみ、目をそらした。



「ノア、ありがとう。でも大丈夫だから。ニーナさんもごめんなさいね。ノアはわたしの不甲斐なさに怒っている部分もあるし、そんなに気にしないで」


「いえ……そちらの方がおっしゃる通り、アリシア様はもっとあたしを責めて良いのです」


「もう、貴女までそんなこと言って……」


「あ、アリシア様、それです」



 ニーナはアリシアの言葉を遮るようにして指さした。その先には、大きめのポットが乗ったテーブルが設置されている。

 アリシアはテーブルに近寄り、ポットの中身を見て、匂いをかぎ、満足気にうなずいた。